読みもの / エッセイ

高級炊飯器があるのに、失敗した土鍋ご飯のほうが美味しく感じた話

タイガーの土鍋ご泡火炊き JRX-S100 があるのに、土鍋で半合だけ炊いたご飯のほうが美味しく感じた。吹きこぼれて芯も残った失敗作なのに、なぜなのか。少量炊きで「弱火10分」が焦げる理由、香り・食感・手間のかけ方から見た美味しさの正体、次回の半合炊きのメモまで整理しました。

うちの炊飯器はタイガーの「土鍋ご泡火炊き JRX-S100」という5.5合炊きで、炊飯器としてはかなり上のクラスのものです。炊き上がりに不満はまったくありません。

それなのに先日、土鍋で半合だけ炊いたご飯が妙に美味しく感じました。しかも、出来としては失敗していたのに、です。なぜなのか気になったので、整理しておきます。

今回の炊き方と、失敗の内容

炊いたのは半合ちょっと、米80gです。

まず分量の話から。1合は約150g(180ml)なので、半合なら本来は75gです。自分は1合160gだと思い込んでいて80gにしていましたが、この程度の差は問題になりません。

水は米の重さの1.3〜1.5倍が目安で、80gなら大さじ7〜8(105〜120ml)。土鍋で少量を炊くと蒸発する割合が大きいので、多めの大さじ8にしました。

火加減については、以前から困っていたことがあります。よく見るレシピには「沸騰したら弱火で10分」と書いてありますが、少量でそれをやると高確率で焦げます。なので自分は、沸騰したら火を止めてしまうことが多いです。

調べてみると、これは少量炊きではむしろ理にかなった方法でした。量が少ないと、沸騰した時点で水の大半がすでに米に吸われるか蒸発していて、鍋底にほとんど水分が残っていません。そこから弱火を続けると、コンロの最小火力でも空焚きに近くなります。一方、米に火を通すには100℃近い温度を15〜20分ほど保てばよく、厚手の土鍋なら余熱だけでそれができます。「弱火10分」は1〜2合を炊くときの目安で、半合にそのまま当てはめるものではなかったわけです。

で、今回の失敗は2つ。

  • 沸騰させている最中に、一気に吹きこぼれた
  • 炊き上がりに少し芯が残った

吹きこぼれは火が強すぎたのが原因です。半合だと沸騰までが早く、中火でも泡が一気に上がってきます。こぼれるのは主にでんぷんを含んだ上澄みなので、炊き上がりへの影響は小さいのですが、コンロの掃除は増えます。

芯のほうは、浸水か加熱が少し足りなかったのだと思います。

それでも美味しかった理由

米の仕上がりだけを比べれば、明らかに炊飯器の勝ちです。均一で、もっちりしていて、芯なんて残りません。それでも土鍋のほうが美味しく感じた理由を考えると、いくつか思い当たります。

1. 炊きたての香りをそのまま食べている

ご飯の香り成分は揮発しやすく、炊き上がり直後からどんどん減っていくそうです。土鍋の場合、蒸らしが終わって蓋を開けた瞬間から食べ始めるので、香りのピークにちょうど当たります。

炊飯器だと、炊き上がりに気づかず保温に入っていたり、おかずの準備と時間がずれたりして、このピークを意外と逃しています。味の印象のかなりの部分は香りで決まるので、この差は大きいはずです。

2. 硬めの粒感は、欠点と魅力が紙一重

少し芯が残るくらいの炊き上がりは、粒が立っていて噛みごたえがあり、表面がべたつきません。炊飯器の「もっちり均一」とは方向性の違う食感です。失敗というより、好みの範囲にたまたま入っていたのかもしれません。

3. 自分で手をかけたものは美味しく感じる

自分で作ったものは、同じ品質でも評価が上がる。これは心理学ではよく知られた効果だそうです。

加えて、火加減を見て、吹きこぼれに慌てて、蒸らしの時間をじっと待つ。その間に期待と空腹が育っています。炊飯器のご飯は「あって当たり前」のものなので、そもそも意識を向けて味わっていません。今回は、ご飯そのものに集中して食べていました。

4. 炊飯器にとって不利な比較をしている

5.5合炊きの炊飯器で少量を炊くのは、その機種の得意な条件ではありません。普段の比較対象が、炊飯器のベストの状態ではない可能性があります。

まとめ

「米の仕上がり」と「美味しいという体験」は別物でした。後者は、香り、食感の好み、どれだけ注意を向けて食べたか、過程にどれだけ関わったか、その合計で決まります。だから、出来では負けているのに体験では勝つ、ということが普通に起こります。

高い炊飯器を買ったのは間違いではなかったと思っています。毎日安定して美味しいご飯が炊けるのは、それはそれで大きな価値です。ただ、時間のある日にたまに土鍋で炊くのは、別の楽しみとして十分ありだと感じました。

次回に向けたメモ:土鍋で半合炊くとき

  • 米75〜80g、水は大さじ7〜8。土鍋が大きめなら大さじ8
  • 浸水は30〜40分(冬は1時間)。計量した水に、土鍋の中でそのまま浸けておけばいい
  • 中火よりやや弱めでゆっくり沸かす。蒸気が出始めたらそばを離れない
  • 蒸気がしっかり出たら火を止める。芯が残りがちなら、ごく弱火を1〜2分入れてから止める
  • 蓋を開けずに15〜20分蒸らす。途中で開けると温度が落ちて芯が残りやすい
  • 食べてみて硬かったら、水を大さじ1振って蓋をし、ごく弱火で1〜2分温めてから数分置く

芯がなくなったうえで今回の美味しさが残るなら、かなり良いところに着地できそうです。

同じ人からは 1 回だけ数えます

土鍋ご飯炊飯器

ほかの読みもの